「卓上ピアノ」もう弾けない 名古屋の井上楽器、倒産
おもちゃの小型ピアノをつくっていた日本で最後のメーカーが消えた。
「卓上ピアノ」の井上楽器製作所(名古屋市東区)が九日までに事業を中止し、
近く自己破産を申請することになった。かつて子どもの音感教育用としても使われ、
家庭に普及していた卓上ピアノも、電子楽器などに押され、売り上げの減少が著しかった。
日本では戦後、物づくりの盛んな名古屋で輸出向けのメーカーが一気に増えた。
一九四八年に創業した井上楽器もそのひとつ。八〇年ごろには国内市場の八割を占める
トップ企業となった。 しかしそのころを頂点に、本物のピアノや電子楽器などが家庭
に広がるようになり、売り上げは減り始めた。最盛期には名古屋だけで二十数社あった
メーカーも、五年ほど前に井上楽器を残すだけになった。井上楽器は卓上ピアノが減った分、
木工技術を生かし、化粧箱などをつくってきたが、今月八日に一回目の不渡りを出した。
民間調査会社の信用交換所によると負債総額は約六億七千万円。
1999.03.10 東京新聞朝刊
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