★ 水中モーター



はすぴー世代のおっちゃんたちの少年期は だれでもがプラモデル作りに熱中したもんだ。

サンダーバート、キャプンスカーレットのTV番組からは近未来的な乗り物を作ったり

アニメやマンガからは「マッハ号」「マイティ号」「グラプリ野郎カー」などを作り、

乗り物系からロボット系、戦車や軍艦、潜水艦の戦争系をかわるがわる作ったもんだ。

普通の男の子は ここまでなのであるが、さらに発展すると姫路城や夢殿、東京タワーの

ように建造物系になっていくのが不思議発見なのである。

(建造物系を作る人は総じて根暗なやつで友達が少ないという共通点がある)

 
さて、今回はプラモデルの話ではなく、船や潜水艦の動力として用いられた「水中モーター」

の思い出だ。「水中モーター」は小型モーターでは独占的なメーカーで「マブチ」

製造販売していて「マブチ水中モーター」というのが正式かもしれない。

当時の子供はこれとプラモを合体させてお父さんとお風呂に入るのが楽しかったのだ。

「水中モーター」を知らない人のために少々、説明を加えよう。

 

「水中モーター」は その名の通り、水中で動くモーターで、長さは約20センチ、

魚雷のような形状でスクリューを回転させることで推進する。電池は単3が一本だけ入る

ようになっていた。電池ケースの部分を30度くらい回転させると、スイッチが入るよう

になっている。大人になって思うのたが、「愛のバイブレーション」と仕組みや形状が似

ているのだ(笑)。おっと、はすぴーは詳しいことはしらないが、、、、

 

価格はたぶん当時の値段で200円だったように思う。ちょっとしたプラモが

100円の時代だったから本体よりも高級だったと言える。

この水中モーターには吸盤がついていて、プラモの船の底にくっつけてあたかも小判鮫の

ように泳がすことができのだ。

プラモがない時でも、水中モーターさえあれば、お風呂場では石鹸箱、シャンプー、洗面器

にくっつけて遊ぶことができるのだ。

そしてスクリュー部分には「舵」があり、これを微調整することで直進、大きく旋回、小さく

旋回、早くせんかいっ!・・・と操縦することも可能だ。



サーフィンボードにつければ・・・そりゃムリだわ
 
 
水中モーターで遊ぶことは楽しいのだが、自宅の風呂場ではあまりに狭くて岸から岸まで

せいぜい1メートルくらいなのでもっと広いところで遊びたくなるのは 極々普通の健全な

男子であり、健全な肉体に健全な精神が宿ると哲学者 ソクラテスも主張している。(ウソ)

したがって、はすぴーと友人らは水中モーターとプラモ(G0!Go!サブマリン号だったと思う)

を手にして近所の銭湯に行った。

銭湯での水中モーターを装着させたサブマリン号はよく走ってくれた。

はすぴーよりも年下のガキどもには羨望の目でみられ、「ぬははは、、、いいぞいいぞ、

石鹸箱号と激突じぁぁ〜」などと言って大声でふざけあっていた。

家ではお母さんから「自宅の風呂にはいりなさいっ」と怒られつつも、水中モーターで

遊びたいだけの理由から友人らを募っては銭湯にいった。



 

何度目かの銭湯で、とあるオヤジからすごい剣幕で叱られたことがある。背中に入れ墨こそ

入っていなかったものの、そのオヤジは目を吊り上げて「おい、ガキども、湯が動くじゃねぇ〜か

ここはお前らの遊び場じゃねぇーんだよ」とはすぴーらを怒った。

今にしてみれば、オヤジの主張も一理あり、銭湯をわがもの顔で遊んでいるガキはうざったい

連中だったと思う。しかし「湯が動く」というセリフは未だに理解できない。

これはどこかの方言だったのだろうか?まさか水中モーターのスクリューでお湯が動くことを

真剣に怒ったのだろうか。「湯が動く」の意味を知っている方はぜひ はすぴーまでメール

していただきたい。ずーーと この意味がわからなくて30年以上も悩んでいるんだから。

 

こんなことがあってから、われわれは銭湯に行くことを恐れ、自然と足が遠のいた。

そして次なる大海を求めて 知恵を振り絞った。友人G君が「おい、学校のプールで遊べない

かなぁ」と発言した。この季節はたぶん春だったので、学校のプールは立ち入り禁止で、

潜入するためには先生に見つからずに金網をよじのぼってこっそりとやらねばならない。

「ちょっと、ヤバくないか」とはすぴーは優等生ぶりを発揮したのだが、G君は「プールは

職員室からは死角になっているし、校庭からも見えづらいから大丈夫だ」と宣言した。

ではでは、イザイザ、ということになり、各人は 水中モーターとプラモをもって学校の

プールに出動した。プールは銭湯と違って一度、動かしたらあとは対岸につくまでは手も足も

だせず、ただただ「お願いだから 途中で止まらないでね。向こう岸まで無事についてね」

心の中で祈るばかりで相当、緊張した。プールでは風や波もあり、こんなおもちゃではなかなか

向こう岸までたどりつかなかった記憶がある。

こうして先生に見つからないように緊張しながら、途中でプラモが沈没しないか緊張しながら

遊ぶことは かなり疲れることがわかり、2度とプールで遊ぶことはなかった。

ちなみにプールで水中モーターで遊んだのは われわれだけでなく、その後、1学年上の

生徒がプールで遊んでいたところを用務員に見つかって、職員室では地獄のような光景

だったとという うわさを聞いて はすぴーは寿命が3年ほど縮んだ思いであった。

現在、はすぴーは白髪が目立つようになっているが、この時の寿命短縮が原因しているのかも知れない。

 
憧れの水中モーターは懸賞にもなった

********************************

 【オマケ】
 

「マブチ水中モーター」は、はすぴー世代のおっちゃんならたいていの人が知っているアイテム

だと思うし、実際 これで遊んだ人も多いと思うが、モーターのマブチは水中だけでなく「空中」

の分野にも手を出していたことを知っている人は少ないと思う。

人呼んで「マブチ空中モーター」。これはマブチが水中で蓄積したノウハウを空中にも対応できる

ように改造したものだ。。。。と書きたいところだがら、実は単に水中モーターのスクリューの

代りにプロペラを取り付けただけのものである。(当時はグライダーや動力飛行機も流行っていた)

   
これが空中モーターだ。当時750円はかなりの高額

 

むしろ、水中モーター・空中モーターよりもかっちょよかったモーターは「船外機」だと思う。

船外機とはモーターボートや釣り舟が付けている外付けの推進器のことだ。

これのおもちゃ版が「マブチの船外機モーター」である。本物に忠実なデザインで、どんなプラモ

にも取り付けられる。いまでもこれは発売されているのだろうか?

【原稿:1999.12.8】

 



 お便りコーナー

 



「あの頃」のセピア色の想い出

TOP